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雇用管理・就業規則

▼雇用管理について

 雇用管理、というと、内容が分かるようで分かりにくい言葉ですが、雇用管理とは「これ」です、という具体的な内容があるわけではありません。

 「雇用管理」というと大げさに聞こえもしますが、ここには、就業規則作成、人事制度・賃金制度構築といった具体的なものから、社内での細かなルールづくりやモチベーション維持のための日々のちょっとした声掛けまで、あらゆるものが含まれると思っています。

 「税理士と社労士を兼ねることによるメリット」にも書きましたが、人件費というのは、ただ高い金額(給与)を支払えばそれだけで質の高い労働力を得られる、というものではありません。

 適正な雇用管理をして、従業員の能力やモチベーション、満足度などを高めていき、「よく働いてくれる」状態にすることが大切です。

 これは決して「働かせる」「こき使う」ということではなく、従業員側においても働くことが喜びとか楽しみとなるような状態をつくりだすことを意味しています。

こちらにも書いたように、事業主様側と従業員側で「WIN-WIN」の関係となるような状態をもつことが肝要であり、そのための手段が様々な「雇用管理」となります。

▼就業規則について

 上に書いたように、雇用管理とは、広い意味では事業主様と従業員の関係性にかかわるあらゆる内容を指しますが、狭い意味では、「ルール作り」という意味にも解釈できます。

 そして、その社内ルールのうち、主要な部分を明文化したものが、就業規則です。

 よく、就業規則の作成に難色を示す事業主様がおられます。
 おそらく、いろいろなことについて、明文化しないままにしておいて、何かの際には柔軟に物事を処理したいというお気持ちがおありなのだと思いますが、就業規則は、内容さえしっかりと吟味して作成すれば、決して事業主様の邪魔をするものとはなりません

 むしろ、作成することで、会社の方針に沿わない従業員に対して公的に注意したり、改善を求めたり、最終的には懲戒処分をしたりすることも可能になります。(逆に就業規則に定めがなければ、懲戒処分は一切できません。)

 また、事業主様と従業員との間で雇用契約を締結する際、雇用契約書(労働条件通知書)を作成することになります。
 雇用契約書(労働条件通知書)には記載すべき事項というのがありますが、それらの事項以外にも様々な事項(社内ルール)が労働条件を構成することになります。

 ですので、そういう内容については就業規則に定めておけばよく、個別の雇用契約書にすべてを記載する必要はありません。
 就業規則自体が労働条件の一部となるため、細かい内容や全従業員に共通の内容については就業規則に定めておけば事足ります。


●たとえば、次のような場合には、ルールを明文化し就業規則に定めておくことが有用です。

  • 体調を崩したのでしばらく休みたいが、何日間くらいなら休職できるのか
  • 期間の定めのない雇用契約を締結したが、何歳まで働き続けることができるのか?(=定年は何歳か?)
  • 正社員は定年が65歳らしいが、パートの場合はどうなのか


●また、従業員間での公平性を確保するためにも有用です。たとえば次のような場合が考えられます。

  • この前、Aさんがご親戚の不幸で慶弔休暇をもらってたみたいですが、私はもらえないのですか?
  • 兄弟姉妹の結婚なら慶弔休暇が認められるみたいですが、姪の結婚でも休暇がもらえるのですか?
  • Bさんは田舎が遠方なので、この前ご不幸で4日間慶弔休暇をとっていたみたいですけど、私は実家がすぐ近くだからって2日しかもらえないのですか?
  • パートでも慶弔休暇はもらえるのですか? 娘が結婚するんですが・・・
  • Cさんは1か月定期分の通勤交通費を毎月もらってるみたいですけど、私は6か月定期を買うように言われました。不公平じゃないですか?
  • 電車じゃなくて自転車で通う予定なんですが、駅の月極駐輪場代は通勤交通費の対象ですか?

 (※慶弔休暇は労働基準法に定めがなく、会社の自由裁量で定めることができます。ですので尚更、その有無やある場合の条件や日数などは、就業規則で定めておいた方が良いでしょう。)


●労働基準法では、労働条件の最低ラインが定められていますが、事業主様の裁量で、労働基準法の内容を上回るような労働条件を定めることは差し支えありません。たとえば次のような内容です。

  • 熟練が必要な仕事のため、従業員には長く勤めてほしい。そのため、有給休暇とは別に長期勤続休暇を設けて、長く勤続してくれている従業員に報いたい
  • 有給休暇の管理が煩雑なので、何月に入社した従業員であっても、前倒しして一律4月に有給休暇を付与したい
  • 終業時刻は18:00となっているが、やむを得ず時間外労働が発生することがある。その際には、夕食等のため、昼休みとは別に18:30~19:00を休憩時間としたい
  • 当社は女性が活躍する職場なので、彼女たちがより働きやすい職場とするため、育児休暇や介護休暇、育児短時間制度等を、法律よりも充実した内容にしたい

(※有給休暇の付与日は、前倒しすることは差し支えありませんが、本来の付与日より後にずらすことは違法となります。)

●また、就業規則は従業員だけを守るものではありません。会社の方針に背いたり、勤務態度の悪い従業員について、会社の利益を守るため、処分をする必要があることもあります。

  • 連絡もなしに遅刻をする従業員がいる。遅刻分の時間給は当然差し引くが、それ以外にもペナルティとしていくらか減給したい
  • 上司の命令に従わず、勤務態度があまりにも悪いので、基本給を減額したい
  • 複数の従業員からセクハラがあったとの訴えがあった課長待遇の従業員を降格したい




 これらのように、従業員に対して何らかの処分をする場合、就業規則に懲戒についての定めをしておくことが必要不可欠です。上にも書いたとおり、懲戒は就業規則に定めがない場合には行うことができません。
 懲戒処分は、場合によっては事業主側からの一方的な処分(懲戒権の濫用)となる恐れがあるため、法律上のその取扱いはかなり厳格なものとなっているのです。

 就業規則に定める場合には、次の事項を定めるようにしましょう。

  • どういうことをした場合に、懲戒処分を受けるのか?
  • どういう内容の懲戒処分があるのか?(たとえば、減給、降格、出勤停止など)

 また、懲戒については、就業規則に定めをおく他にも、実務上の具体的な運用の際にもたくさんの注意事項があります

 万が一、従業員との折り合いがつかず、訴訟等に発展した場合、適切な運用をしていた場合には「その懲戒処分は無効」とされることも考えられますので、具体的な懸案事項がある場合には、社会保険労務士にご相談ください。
(訴訟などはあまり頻繁に起こることではありませんが、だからといって適当な運用をしてしまって、いざという時に役に立たないようでは困りますので、どうせならきちんとした内容の就業規則を定め、適切に運用していきましょう)


 このように、就業規則は、従業員を雇う場合には、事業を適切に運営していくために大変重要なものです。

 労働基準監督署に届け出る必要があるか否かにかかわらず、また正式な就業規則ではなくとも、社内のルールは少しずつ明文化していくようにした方が良いでしょう。
 事業の特性や、会社の理想像などを織り込んで、よりご自身の事業運営の助けとなる内容にしていきたいものです。

 なお、もし「こういう内容にしたいが、法的には問題ないか?」「絶対に定めないといけない内容はあるのか?」などの疑問点がありましたら、社会保険労務士までご相談ください。
 プロの視点から、貴社にふさわしい内容の就業規則・社内規程を提案させていただきます。





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