節税相談
事業主様が税理士に期待することのひとつに、節税相談があります。
節税を考える際に重要だと思われることを、以下に書いてみます。
▼長いスパンでの判断
法人決算・確定申告のページにも記載したとおり、節税は、いざ決算処理が終わって「このままでは納税額が大きいから節税しよう」と思っても、なかなかできるものではありません。
まず、時期としては、当然ながら会計期間が終了してからでは不可能なため、会計期間中に、利益を常に予測しながら動く必要があります。
次に内容としては、いくら税金が安くなるからといって、無駄な経費を使うようでは本末転倒です。
今、備品や教育研修などで何が必要なのか、または、将来はどういう方向に事業を展開したいから、そのための先行投資として何をしておくべきなのか、そういう視点から考える必要があります。
特に、固定資産の購入にあたっては、消費税にも深く関わってきます。
消費税については、現行法上は、2年前から必要な届出などを行っていなければ当期の節税が行えないため、短期的な予定だけではなく、中長期的な投資(固定資産購入)計画についても、事業主様と税理士の間で普段から密に意思疎通をしておく必要があります。
決して、短期的視点だけでは効率的な節税はできません。
これらについては、損益予測、予実管理とも深く関連します。
▼節税対策の内容
上にも書きましたが、いくら税金が安くなるからといって、無駄な経費を使うようでは本末転倒です。
<一般的な節税対策>
どちらにせよ近いうちに大きな資産を購入する予定があるから、当期に前倒しで購入しておくとか、
予想外の利益が上がったので、普段ではなかなかできない何かの取り組みにお金を使ってみるとか、
いつも頑張ってくれている従業員たちに臨時で賞与を支払うとか、
または従業員全員で社員旅行に行くとか、
節税しようと考える場合、まずはこういった点から検討が始められることが多いと思います。
(なお、固定資産(減価償却資産)の場合には、購入年度に全額費用に入れられる訳ではありませんので、注意が必要です。)
ここで注意しておきたいポイントですが、
節税対策に限らず、事業運営というのは、
「資本の投下(お金を払う)→より大きな金額で回収」というのが大原則です。
簡単な例では、50円で仕入れた商品を10円の経費をかけて100円で売る、ということですが、これはその他の費用でも同じです。
合計60円の資本を投下して、100円の売上として回収するわけです。
つまり、上にあげた節税対策で、
たとえば固定資産を購入して業務効率が上がるとか、
臨時賞与や社員旅行を実施して従業員のモチベーションが上がるとか、
何らかの目的でお金を支払った場合、それは将来的により大きな収益に貢献するものであるべきなのです。
利益の削減を考えるあまり、意味のない飲食交際や華美な内装などに走らないように気を付けたいものです。
<生命保険の活用>
次によく検討されるのが、法人様の場合、法人契約の「生命保険」の活用です。
生命保険については、目的や資金計画がはっきりしている場合など、利用方法によっては有効なものなのですが、必ずしも万能なものではありません。
利用の際には、よく考えてみる必要があるでしょう。
必ずしも悪いと言うつもりはないのですが、生命保険の活用の際には、とかく本来の目的ではなく「裏技」的な方向に走ってしまいがちですので、事業本来の目的や計画から逸れすぎないように注意したいものです。
<小規模企業共済等の活用>
個人事業主様の場合、生命保険に加入しても最高12万円までの生命保険料控除しかないため、よく検討されるのが、「小規模企業共済」や「確定拠出年金」です。
これらは老後の備えの手段としては大変有利な内容のものであり、全額が所得控除されるため、長期的に資金に余裕があると見込まれる場合には検討の価値があります。
特に、事業所得者が一般的に加入する国民健康保険や国民年金は、給与所得者が一般的に加入する健康保険(社会保険)や厚生年金保険ほど手厚さがないため、老後の備えについては、より意識的に考えておくべきといえます。
(余談ですが、傷病時の備えや失業時の備えについても同様で、より意識的である必要があります。)
ただし、これらは一度加入すると継続していく必要があるため、一時的な利益増加の対応策としては不向きです。
▼内部留保
長い間商売をしてきて、長期にわたって利益を出している事業主様は、納税することにも慣れているものです。
しかし、数年前に事業を始められたような社長様や事業主様の場合、開始後数年たって、ようやく利益が出始め、繰越損失も解消していよいよ納税額が発生してくる時期というのは、どうしても、税金を納めることが何か余計な出費のように感じられるものではないでしょうか。
そんなとき、上に挙げたような節税対策を行うのは良いことだと思いますが、もしそれほど効果がない対策しか取れない場合、どうするのがよいでしょうか。
そんなときは、
無理に(不必要な)節税はせず、納税するのが良いと思います。
というのも、この時期の企業様には、節税のほかにもうひとつ、内部留保の充実という視点が必要です。そして内部留保というのは、いったん納税の洗礼を受けた後にしか行えないものだからです。
内部留保というのは、「貯金」です。
個人の一般家庭では、ほとんどが何らかの貯金をしていると思います。
その目的は、「いざというときの備え」だったり、「数年後の車購入資金」「住宅購入資金」「教育資金」などの特定の使途のためのものだったり、様々です。
これは企業の場合も同じで、「数年後の固定資産購入資金」であったり、「業績不振に陥った時の当面の運転資金・給与支払資金」だったり、何らかの貯金=内部留保が必要になってくるのです。
企業経営というのは長期にわたるものであり、また長期に継続させるためにあらゆる努力をすることが大事です。
しかし、国内外の景気の変動や、市場のニーズの変化など、そこには常に浮き沈みがあるものです。
企業を経営する以上、利益を出す努力はするものですが、同時に、利益が出なかった場合の備えについても同じくらい考えを巡らせておく必要があります。
特に、従業員を雇用している場合にはなおさらです。
ですので、事業開始後数年たって、ようやく利益が出始めた頃にこそ、節税だけではなく、その利益を使って内部留保の充実を考えることも、非常に重要になってきます。
節税にあたっては、これらのバランスを考えながら、長期的な視点で検討するのが良いでしょう。


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